心の宝・教育は楽しむ能力の訓練
                            2022年5月15日 寺岡克哉


 教育とは、(人生を)楽しむ能力を、訓練することである。


 上のような言葉は、ラッセル(注1)という人物が残したものです
が、

 私は、この言葉を初めて知ったとき、「まさに、その通りだ!」と、
心の底から感銘(かんめい)をうけました。


 そして、この言葉によって、

 私の「教育観」というものが、はっきりと決定づけられたのです。


 そのため、この言葉は、私の生涯における「心の宝」となってい
ます。


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注1 ラッセル:

 バーランド・ラッセル(1872年-1970年)は、イギリスを代表する
思想家であり、20世紀最高の知性を持つ一人です。

 厳密な数理哲学者、理性の情熱的な提唱者、独断的・情緒的な
思想の批判者、活動的な平和主義者として、生涯にわたり活躍(か
つやく)しつづけました。
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 さて、ラッセルは、

 上で紹介したような言葉を、「幸福論」という著作の中で残して
いるのですが、

 その部分を抜粋してみると、以下のようになります。


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       ラッセル幸福論 第3章からの抜粋

 アメリカの少年たちは、ごく幼いころから経済的な成功のみが重要
だと感じているので、金銭的な価値のない教育にわずらわされるこ
とを望まない。

 教育は以前、多分に楽しむ能力を訓練することだと考えられて
いた
――つまり、てんで教養のない人たちには縁のない繊細な楽し
みである。

 18世紀には、文学や絵画や音楽に見識のある喜びを見いだせる
のが「紳士」のしるしの一つであった。

 今日、私たちは、こんな趣味に共感しないかもしれないが、少なく
ともそれは本物であった。


(参考文献 ラッセル幸福論  安藤貞雄 訳  岩波文庫 p56)
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 上で抜粋した、ラッセルの幸福論は、1930年に書かれたもの
ですが、

 当時の、アメリカの少年たちがそうであったように、

 現在の日本における、多くの若者や、その親たちも、

 「教育とは、良い大学に進学して、良い会社に就職するための
もの」と、いうように・・・ 

 つまり、「教育とは、経済的な成功を得るためのもの」と、考えて
いるのではないでしょうか。



 しかし、それは、

 教育の本来の目的とは、すこし違うように、私には感じられるの
です。



 じつは私も、大学院の博士課程という、かなり高等な教育を受け
た経験があります。

 が、しかし、それは決して、経済的な成功を得るためではありま
せんでした。

 もしも、経済的な成功を得るためなら(つまり、良い会社に就職
するためなら)、修士課程までの進学で止めておくべきで、

 博士課程に進学してしまうと、企業への就職にとっては、まったく
不利になってしまうのです。



 しかも、たとえば私のように、

 博士課程まで進んだのに、博士号を取ることができず、大学など
の研究職に就(つ)けなかった人間は、

 まさに「人生が詰んだ!」としか、言いようがありません。



 しかし、いま現在の私は、

 定期的な収入がなく、遊ぶための金が無いにもかかわらず、

 けっこう楽しく人生を過ごしており、自分の人生にとても満足して
います。


 つまり、

 様々なことに興味をもち、いろいろと調べて、自分の思いや考え
をまとめ、それを文章に書いて、本サイトで発表することが、

 たとえば高級レストランで食事をしたり、海外旅行などをするより
も、ずっと楽しく感じるのです。


 やはり私は、

 高等教育を受けたことよって、思考能力や、調査能力や、分析
能力が向上し、

 (お金を、そんなに使わなくても)人生を楽しむ能力が、身につい
たように実感しています。


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 ちなみに、もしも例えば、

 テレビを見るか、酒を飲むか、パチンコをするぐらいしか、人生の
楽しみが無かったら、

 あまりにも退屈で、(精神的に)貧困な人生だと、私には思わざる
を得ません。



 最後に、

 私から、とくに若い人たちに申し上げたいのですが、

 人生は、たった一度しか無いのですから、出来るかぎり最大限に
楽しむべきです。



 そのためには、

 それぞれの人が、可能なかぎり高等な教育を受ける方が良いと、

 私は心の底から確信をもって、皆さんにお伝えしたいと思う次第
です。



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