ロシア憎悪への対処
                             2022年4月3日 寺岡克哉


 ロシアの侵略によって、ウクライナの人々が苦しんでいるのを
見ると、

 プーチン大統領にたいし、怒りと憎しみが込み上げてきて、

 ほんとうに腸(はらわた)が煮えくり返りそうです。



 そしてまた、

 プーチン大統領を支持している人々にも怒りを感じ、

 プーチン大統領を、なかなか失脚に追い込めないロシア国民
に対しても、イライラを感じてしまいます。



 が、しかし、

 プーチン大統領や、ロシアの人々に対して、

 ただ無責任に、怒りや憎しみを叩(たた)きつけるだけでなく、

 すこし頭をひやして、冷静にならなければならないとも、思って
います。



 それで今回は、

 頭をひやして冷静になるための、私なりの対処について、

 ちょっと紹介したいと思いました。


            * * * * *


 さて、

 プーチン大統領や、ロシア国民に対して冷静になるための、
私なりの処方とは、

 ロシアのウクライナ侵略に、勝るとも劣らない極悪非道な軍事
侵攻を、

 かつてアメリカが、イラクに対して行っていたという事実を、思い
起こすことです。



 2003年3月20日・・・ 

 アメリカ軍が主体となり、イラクに対して軍事侵攻を行いました。

 その理由は、イラクが大量破壊兵器(大規模な破壊、殺傷能力を
持つ核・生物・化学兵器の総称)を、隠し持っているとされたため
です。

 同2003年の5月には、いちおうイラクが、アメリカ軍に占領されま
した。

 ところが、その後も、反米武装勢力との衝突が、とても長く続いて
行くことになるのです。

 そして結局、アメリカ軍が完全に撤収して、イラク戦争が終結した
のは、2011年12月14日になってのことでした。



 この、2003年~2011年までのイラク戦争によって、

 イラクでは、およそ50万人もの民間人の命が、直接的、間接的に
奪われたとも言われています。


 さらにイラク戦争では、アメリカ軍が800トン~2000トンもの「劣化
ウラン弾」を使用したとされています。

 こんなに大量のウランが巻き散らされたら、放射能汚染も甚大になら
さるを得ません。

 この放射能汚染によって、イラクでは、癌や白血病などの健康被害
が増えたり、奇形児が生まれる頻度が高くなっていることが、指摘され
ています。


            * * * * *


 ところでまた、

 イラク戦争が行われた経緯(いきさつ)も、まったく酷(ひど)いもの
でした。



 当初イラクは、大量破壊兵器を隠し持っているのではないかと、
世界中から疑われていたにもかかわらず、

 国連による大量破壊兵器の査察を、拒否していました。


 しかし、アメリカの軍事侵攻が始まる半年前になると、

 イラク政府は国連にたいし、大量破壊兵器の査察再開を、無条件
で受け入れることを伝え、

 侵攻が始まる4ヵ月前には、国連による全面査察に応じています。


 さらに、

 アメリカ軍が侵攻する直前には、イラクのフセイン大統領が、

 「アメリカ政府が政権交代を求めなければ、あらゆる要求に完全
に協力する用意がある」

 という書簡を、アメリカのブッシュ大統領に送っていました。


 ところがアメリカ側は、その書簡を無視して、軍事侵攻に踏み切っ
たのです!



 つまりイラクは、アメリカ軍の侵攻直前で、すでに降伏したような形
になっており、

 それならば、国連による大量破壊兵器の査察を、徹底的にやれば
良く、軍事侵攻の必要は、まったくありませんでした。


 それなのにアメリカ軍は、軍事侵攻を行ったわけです。


 そして、多くのイラク民間人が犠牲になり、フセイン大統領も処刑
されました。



 ところが!

 イラク侵攻後に、アメリカ軍や国連が、大量破壊兵器の捜索を
行いましたが、

 しかし、大量破壊兵器は見つからなかったのです!


            * * * * *


 ここまで見てきましたように、

 アメリカ側は、フセイン大統領の降伏を無視して、やらなくても
良かった軍事侵攻をやり、

 その結果として、50万人もの民間人を死なせ、劣化ウラン弾で
放射能汚染もさせました。

 それなのに結局、大量破壊兵器は見つからなかったわけです。

 ゆえに、アメリカ軍の侵攻は、完全に間違いだったと言わざるを
得ません。



 これを、卑近(ひきん)な言葉で、端的に表現すれば、

 「間違って50万人も死なせちゃった、テヘペロ」とでも、なるで
しょう。

 アメリカは、イラクに対して、こんなムチャクチャなことをやったの
です。



 しかしながら、2003年当時の私は、

 アメリカのブッシュ大統領に対して、プーチン大統領ほどの怒り
と憎しみを感じなかったし、

 アメリカ国民に対しても、ロシア国民ほどのイライラを感じません
でした。



 この違いは、いったい何なのか?

 そのことに考えを巡(めぐ)らせると、頭がひえて冷静になること
ができます。

 そしてこれが、私なりの、「ロシア憎悪への対処」なのです。



 さて、ロシアの侵略と、イラク戦争の違いは、

 おそらくイラク戦争では、アメリカの印象を悪くしないように、日本
なりの情報操作があったのではないかと思います。

 つまり、イラク戦争のときは、民間人の悲惨な姿や、癌や白血病
などの健康被害が増えたりことや、奇形児が生まれたという報道が、
とても少なかったように思えます。

 たとえば、生まれた直後の奇形児の姿が、日本のマスコミで大々
的に報道されていたら、アメリカの印象は地の底に落ちていたでしょ
う。


 そして一方、ロシアの侵略では、

 プーチン大統領や、ロシアの印象を悪くするような情報操作が、
少なからず行われているのではないでしょうか。

 たとえば、ウクライナ民間人の悲惨さを伝えるニュースが、毎日の
ように報道されていますが、

 この種のニュースは、イラク戦争のときよりも、かなり多いように感じ
ます。



 もちろん、イラク戦争が始まった19年前と違って、昨今では、

 スマホの普及によって、被害現場の直接的な情報が増えたことも
あるでしょう。

 つまり、ウクライナ国民の多くが、現地に派遣された報道記者の
ような役割を果たしているわけです。



 が、しかし、被害現場の悲惨な状況を、

 ロシアの侵略のように、マスコミで大々的に取り上げるか、

 イラク戦争のように、あまりマスコミで大きく取り上げないように
するかは、

 おそらく日本レベルを超えた、西側諸国レベルの意図的な圧力
が、大きく影響しているように感じます。



 つまり、いま自分が感じている、ロシアへの怒りや憎悪の感情は、

 西側諸国レベルの意図的な圧力によって、誘導されているのでは
ないか。

 そのように考えると、すこし自分の頭がひえて、冷静になることが
できるのです。



      目次へ        トップページへ