私の神 8
                            2022年3月27日 寺岡克哉


ロシアの侵略による悪の増大は、どこで止まるのか?

 前々回の、エッセイ1044「私の神 7」で書きましたように、

 人類が悪の増大を止(や)めないかぎり、「私の神」は苦しみと不幸
の増大を、絶対に止(と)めません。

 あくまでも、人類が悪の増大を止(や)めないなら、それこそ、ほとん
ど全ての人類が滅ぶまで、「私の神」は苦しみと不幸の増大を止(と)
めません。

 「私の神」は、それほどまでの「徹底的なやり方」によって、

 できるだけ早い段階のうちに、悪の増大を止めさせて、この世から
悪を退(しりぞ)けようとします。



 ところで、

 人類が悪の増大を止(や)めないかぎり、「私の神」は苦しみと不幸
の増大を止(と)めないのは確かだとしても、

 しかし、それでは、

 ロシアがウクライナへ侵略したことによる悪の増大は、一体どの
程度で止まるのでしょうか?


 今回は、そのことについて、ちょっと考えてみたいと思います。


             * * * * *


ウクライナの現状

 ロシアが、ウクライナへ侵略したことで、たいへんに大きな苦しみ
と不幸が生じています。

 市民が住む都市部にも、無差別に攻撃が加えられており、正確な
死者の数が分からないほどです。


 一方、3月19日の時点で、

 ウクライナから国外に逃れた避難民は、およそ339万人で、国内
での避難民は、およそ650万人とみられます。

 侵略される前のウクライナの人口は、およそ4200万人だったと
されているので、

 ウクライナ国民の、およそ4人に1人が、避難を強いられたことに
なるのです。



 ここで、私の率直な気持ちを言わせてもらえば、

 このような苦しみと不幸を生じさせた元凶(げんきょう)である、ロシ
アのプーチン大統領には、ほんとうに怒りと憎しみが込み上げてき
ます。

 私も歳をとって寒さに弱くなり、心臓病などの薬を飲み続けなけれ
ば、生きて行けない体になりましたが、

 とつぜんに家や店や病院が破壊され、暖房がとれず、食料や薬
が手に入らなくなると考えたら、その理不尽さに腸(はらわた)が
煮えくり返る思いがします。

 現在のプーチン大統領は、あまりにも狂気じみており、まともな
思考ができる人間であるとは、とうてい思えません。

 どうして、こんな人間が、この世に存在するのか、ものすごく理解
に苦しみます。



 が、しかし、この世が、この様になっている以上は、

 つまり「私の神」が、「この世を、この様にしている」以上は、

 プーチン大統領のような酷(ひど)い人間が存在するのも、この世
の事実として受けとめ、

 その状況の中で、最善の方策を探して行くより仕方がありません。


            * * * * *


ロシアの侵略が止まるシナリオ

 それでは、

 一体どこまで、苦しみと不幸が増大すれば、ロシアの侵略が
止まるのでしょうか?

 以下、そのシナリオについて、いくつか考えてみました。



1.プーチン大統領が、直ちに侵略を止める

 プーチン大統領が、ウクライナに侵略したことを間違いだと悟り、
直ちに戦闘を止めて、ロシア軍をウクライナから撤退させる。

 これが、世界全体にとって、もっとも望ましいシナリオです。

 しかし、いまのプーチン大統領の動向を見れば、その可能性は、
ものすごく低いと言わざるを得ません。



2.プーチン大統領が暗殺される

 プーチン大統領が、何者かに暗殺され、代理の者がウクライナ
への侵略を停止させる。

 この場合は、暗殺の時期によって、苦しみと不幸の大きさが変っ
てきます。

 つまり、いま直ちに暗殺されれば、苦しみと不幸は最小で済みま
すが、

 すでに限定核戦争が始まってしまい、全面核戦争の直前に暗殺
されたのであれば、苦しみと不幸は、とても大きなものになります。



3.プーチン大統領が失脚する

 ロシア国民による反戦運動が高まったり、ロシア軍によるクーデ
ターが起こって、プーチン大統領が失脚する。

 まず、ロシア国民の反戦運動によるプーチン大統領の失脚は、
望ましいことですが時間がかかりそうです。

 つぎに、ロシア軍によるクーデターは、起これば直ちにプーチン
大統領は失脚しますが、
 その後の軍事政権が、侵略を直ちに停止させるのかが気になり
ます。



4.ウクライナが降伏する

 ウクライナが占領され、ロシアに降伏する。

 これは、プーチン大統領にとって望ましいシナリオですが、

 しかし西側諸国がウクライナを支援しているので、実現するのは
難しいと思います。



5.ウクライナで膠着状態が長期化する

 ロシアとウクライナが膠着(こうちゃく)状態になって、それが長期
化し、

 西側諸国によるロシアへの経済制裁が効いてきて、ロシアの体力
が落ちていき、
 また、ロシア国内の反戦運動も活発になって、侵略が継続できなく
なり、ロシア軍がウクライナから撤退する。

 これは、西側諸国が狙っているシナリオだと思いますが、少なくて
も数年、長ければ10年ぐらいの時間がかかると思います。



6.ロシア及びその同盟国と、西側諸国が軍事衝突する

 これはもう、「第3次世界大戦」と言って良いでしょう。

 ここまでの事態には、絶対になってほしくないと思います。

 が、しかし、

 ウクライナのゼレンスキー大統領が、ずいぶん西側諸国を煽(あ
お)っていますし、

 ロシアと同盟関係にあるベラルーシが、戦闘に参加するという
憶測もあるので、

 その可能性がゼロであるという確信は、決して持てないような気が
します。



7.限定核戦争が起こる

 このような事態にも、絶対になってほしくありませんが、

 ロシアのプーチン大統領、ラブロフ外相、ペスコフ大統領報道官
などが、

 もしもの場合には、核兵器の使用も辞さないことを、ほのめかして
いるので、

 このような事態に陥(おちい)ることも、完全には否定できません。



8.全面核戦争が起こる

 ロシアのプーチン大統領を、とことんまで追いつめれば、このよう
になる可能性も否定できないでしょう。

 が、しかし、(ロシア国民を含めた)全人類の総力をあげて、どんな
手を使ってでも、全面核戦争は阻止しなければなりません。

 そのためには、

 プーチン大統領を最後まで追いつめないようにして、話の落とし
どころを模索したり、

 ロシア国内で反戦運動を盛り上げたり、大統領側近の離反を促(う
なが)したり、ロシア軍にサボタージュを勧めたり、軍事クーデターを
起こしたり、

 あるいは、プーチン大統領が全面核戦争の命令をだす直前に、
暗殺することさえも必要になるでしょう。


             * * * * *


 さて、

 上に挙げた8つのシナリオのうち、悪の増大が、一体どこまでで
止まるのでしょう?


 じつは、この問題は、

 「私の神」が、人類をどれだけ賢く作ったのか、あるいは、人類を
どれだけ愚かに作ったのかという問題なので、

 それこそ、「私の神のみぞ知る」です。



 しかし、それでは、何の回答にもなっていないので、私の個人的
な希望を言わせてもらえば、

 まず、プーチン大統領が自らの間違いに気づいて反省し、直ちに
侵略を止めるという、

 現状では最善の結果で終わる可能性も、まったくゼロではないと
思いたいです。


 そして一方、最悪の場合でも、

 5番目のシナリオである、「膠着状態の長期化」で済んでほしいと
願ってやみません。

 が、それでも、ウクライナの人々は、多大な苦しみと不幸に見舞わ
れてしまいます。

 しかしながら、それは、どうしても仕方がないと申し上げるしかあり
ません。

 西側諸国が、難民の救済や、生活物資や医療品などの人道支援
を、可能なかぎり行って、
 ウクライナの人々の苦しみと不幸を、できる限り軽減していくしか、
他に方法が無いように思えます。



 ところで・・・ 

 近年になって、私がすごく危惧(きぐ)していることですが、

 アメリカのトランプ前大統領や、ロシアのプーチン大統領や、中国の
習近平・国家主席などの動向を見ていると、

 たった一人の人間に、絶大な権力を持たせるというのは、ほんとう
に危ない統治システムだと思えてなりません。


 これは、「私の神」が、

 まともに機能しない今の国連に代わって、

 全人類に効力を持った、複数人による統治システムを作らなければ
ならないと、

 人類に警告しているようにさえ感じます。



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