瀬戸内寂聴さんが死去
                           2021年11月21日 寺岡克哉


 11月9日。

 瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)さんが、

 心不全のため、京都市内の病院で亡くなりました。

 享年(きょうねん)99歳(満年齢)でした・・・ 


           * * * * *


 瀬戸内寂聴さんは、

 私がエッセイを書き続けていく上で、とても大きな影響を
与えてくれた方です。



 たしか何かの本で、寂聴さんが語っていたのを覚えている
のですが、

 「60歳代が、いちばん良いものを書ける」のだそうです。



 つまり50歳代では、まだ人生経験が足りず、

 しかし70歳代になると、体力が衰(おとろ)えて、精神の
集中力も低下し、

 60歳代の頃のようには、良いものが書けなくなるという
のです。



 寂聴さんが、確かそのように語っていたのを読んだことが
あったので、

 いま58歳である私にも、「まだ伸びしろがある!」と信じな
がら、

 エッセイを書き続けることが出来ている次第です。


            * * * * *


 ところで、じつは他にも、

 瀬戸内寂聴さんに関して、私の個人的なエピソードがあり
ます。



 それは、

 2002年に、私の拙書「生命の肯定」を出版したとき、

 当時の私は怖いもの知らずだったので、畏(おそ)れ多くも、

 瀬戸内寂聴さんに私の拙書を郵送したのです。


 そうしたら、

 ご丁寧にも、お礼のハガキを送って頂いたのでした。



 以下は、そのハガキの内容です。

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 御清祥(注1)の御事とお慶び申し上げます。

 この度は御高著 『生命の肯定』 を御恵贈賜わり(注2)
心より御礼申し上げます。

 愉しみに拝読させていただきます。

 益々の御自愛、御健筆をお祈り申し上げます。

 先はとりあえず御礼まで。

                     瀬戸内 寂聴


注1 御清祥(ごせいしょう):
 相手に対して、喜びやお祝いを述べる言葉。

注2 御恵贈賜わり(ごけいぞうたま-わり):
 非常に丁寧な言い回しで、おもに礼状などで使われます。
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 無名の私にも、わざわざ礼状を出して下さるなんて、

 そのような瀬戸内寂聴さんの人柄に、ものすごく感動しま
した。



 そして、

 私の拙書を、瀬戸内寂聴さんに読んで頂けるかと思うと、

 そしてまた、

 私の今後の文筆活動にたいし、寂聴さんが励まして下さっ
たと思うと、

 心の底から力が湧いてきたのです。



 このように、

 私がエッセイを書き続ける原動力を、瀬戸内寂聴さんから
頂いたのは確かです。



 ところで、私に原動力を与えた、その力は、

 瀬戸内寂聴さんの生きざまや、人柄によって培(つちか)わ
れてきた力。

 つまり、瀬戸内寂聴さんの「生命の力」だと言えるでしょう。



 そして、その「生命の力」は、

 寂聴さんが亡くなった現在でも、たしかに私の中で生きており、

 その力もあって、私はエッセイを書き続けています。


 ゆえに、この力は、

 本人が死んでも消滅することがない、「寂聴さんの生命力」だと
言えるのです。



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