真鍋博士がノーベル物理学賞
2021年10月24日 寺岡克哉
すこし前のニュースになりますが、スウェーデンの王立科学アカ
デミーは10月5日。
2021年のノーベル物理学賞を、日本出身でアメリカ国籍をもつ、
真鍋淑郎(まなべ・しゅくろう)さん(90歳)を含めた3人に、授与
すると発表しました。
日本人がノーベル賞を受賞するのは、
アメリカ国籍を取得した人を含めて28人目であり、物理学賞では
12人目となります。
真鍋さんは、1958年に東京大学で博士課程を終了した後、アメ
リカの国立気象局で研究を行いました。
(当時の日本は博士課程を出ても、研究者としての就職先がまっ
たく無かったそうです。)
そして、
二酸化炭素濃度の上昇が「地球温暖化」に影響するという
予測モデルを、世界に先駆けて発表したのです。
現在、真鍋さんはアメリカのプリンストン大学で上級研究員を務め
ており、アメリカの国籍を取得しています。
* * * * *
ところで、
ノーベル賞の選考委員会は、真鍋さんの受賞理由について、
「(真鍋さんの仕事が)現代の気候研究の基礎となった」と、
しています。
真鍋さんは、1960年代に地球の気候に関するモデルの開発を
リードし、
そして1967年には、「大気中の二酸化炭素の量が2倍になる
と、地球の表面温度が2.3℃上昇する」
という、とても正確な予測結果を発表しているのです。
* * * * *
ちなみに、
1960年代~1970年代にかけては、地球の平均気温が下降
傾向を示しており、
世間一般では「地球が氷河期に向かっている!」と、よく言われ
ていました。
私も子供のころに、
そのような話を、ずいぶん聞かされた覚えがあるほどです。
しかし真鍋さんは、
そのような時代風潮の中にあって、地球温暖化の正確な予測を
してみせたのです。
このことから、
真鍋さんに限らず、一流の研究者ならば皆が持っている能力だ
と思うのですが、
世間や時代の風潮などに流されることなく、ひたすら真実を探求
するという「精神力の強さ」を、
真鍋さんにも見て取れるように、私は思いました。
* * * * *
ところで、ノーベル物理学賞の選考委員は、
今回の賞が世界の首脳に対して、気候変動の危機がいかに重要
であるかメッセージを込めているのか? という記者の質問にたいし、
「世界の首脳でまだこのメッセージをしっかり受け止めていない人
ならば、私たちがこう言ったからといって理解するものではないと思
う」
「私たちが言えることは、温暖化は確固たる科学に基づいて解明
しているということだ」と、述べています。
この報道を見て、私は思ったのですが、
この期(ご)に及んでもまだ、地球温暖化の危機を軽(かろ)んじて
いるような人間など、ほんとうに、まったく話になりません。
しかもそれが、首脳レベルの人間ならば、なおさらです。
そのような首脳が、まだ存在しているとすれば、それは「世界にとっ
ての災厄」であるとしか、言わざるを得ません。
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