輪廻(りんね)について    2004年2月1日 寺岡克哉


 私は今まで、仏教のいう「輪廻(りんね)」とか「前世(ぜんせ)」など、まったく信じ
ていませんでした。
 しかし最近、「輪廻」や「前世」という考え方にも、それなりの根拠があることに気
がつきました。しかもそれは、科学的な考察と照らしあわせても矛盾しません。
 この発見はちょっと面白いので、皆さんにもお話してみたくなりました。

 仏教には、人間は死ぬと「生まれ変わる」という、「輪廻」の考え方があります。
 輪廻による「生まれ変わり」は、一度や二度ではありません。何千回も、何万回
も、永遠に「生まれ変わり」をくり返すのです。
 しかも、必ず人間に生まれ変わるとは限っていません。牛や馬などの、他の動物
に生まれ変わる可能性も大いにあるのです。
 「輪廻」とは、このような考え方を言います。

 ところで、「自分の過去」に対して輪廻を考えれば、今の私が生まれる前にも、私
はすでに何万回も「生まれ変わり」をくり返して来たことになります。
 「前世」とは、それら過去のすべての「生命」を言います。
 だから「私の前世」は、人間だけとは限りません。犬や猫だったり、さらには哺乳
動物だけでなく、爬虫類や両生類、魚類だったりしていた訳です。
 私は何万回となく生まれ変わりながら、それら様々な生き物の「生命」を渡り歩い
てきたのです。

 ここで今お話した「輪廻」や「前世」は、現代人にとっては非科学的で非常識な考
え方です。だから私は今まで、それらを全く信じていませんでした。
 しかしながら、「輪廻」も「前世」も考えようによっては、それなりの根拠があること
に気がついたのです。しかもそれは、科学的な考察と照らし合わせても矛盾しませ
ん。
 これから、それをお話して行きたいと思います。

                 * * * * *

 輪廻や前世を「科学的に考える」にあたり、いったい「私の生命」は、本当は
いつ誕生したのか?
 という考察から始めたいと思います。

 そうすると、まず最初に思いつくのは、「私の生命は、私の生まれたときに誕生
した」とするものです。
 しかし「私の生命」は、本当に「私が生まれたとき」に誕生したのでしょうか?
 私が生まれる前の「胎児の生命」は、「私の生命」ではなかったのでしょうか?
 そんなことはありません。私が胎児だったときの生命も、「私の生命」です。

 それならば、精子と卵子が結合して「受精」をしたときに、「私の生命」が誕生した
のでしょうか?
 受精をする前の精子と卵子は、「私の生命」ではなかったのでしょうか?
 この疑問を、私はつぎのように考えます。

 例えば、精子や卵子に「生命」というものがまったく存在せず、精子や卵子が完全
に死んだ「ただの物質」であって、受精のときに「生命」というものが突然に誕生した
のならば、「私の生命は受精のときに誕生した!」と確かに言えるでしょう。
 しかし、そんなことはありません。精子や卵子には、もともと「生命」が存在してい
るからです。
 もしも精子や卵子に「生命」が存在しなければ、お互いに結合して受精するなどと
いう、「生命活動」を行うはずがありません。だから、精子や卵子に「生命」が存在す
るのは明らかです。
 ゆえに、受精のときに「生命が誕生した」のではありません。もともと存在していた
生命が、受精による合体という「変化」をしただけなのです。
 つまり精子と卵子の「生命」は、受精によって変化する前の「私の生命」だと言える
のです。

 それならば、精子や卵子が作られたときに、「私の生命」が誕生したのでしょうか?
 これも、そんなことはありません。
 精子や卵子が作られたときに、「生命」がとつぜんに誕生した訳ではないからです。
 精子は、父親の精巣の細胞が変化して作られたものであり、卵子は、母親の卵巣
の細胞が変化して作られたものです。
 つまり精子は、父親の生命が変化したものであり、卵子は、母親の生命が変化し
たものなのです。
 だから、精子や卵子を作り出す「親の生命」もまた、変化する前の「私の生命」だと
言えるのです。

 そしてこの関係は、人類の祖先や、哺乳類の祖先、爬虫類、両生類、魚類、軟体
動物、プランクトン、バクテリア、そして、地球で生まれた最初の生命体にまでさかの
ぼります。
 しかし、40億年前に最初の生命体が誕生したときだけは、今までの話が成り立ち
ません。
 なぜなら、その時だけ、完全に死んだ「ただの物質」から、「生命」というものが突然
に誕生したからです。
 だから、私の「生命が本当に誕生した!」と言えるのは、40億年前のこの
ときなのです!


 「私の生命」は40億年前に誕生し、それ以来ずっと存在し続けていたのです。ただ
それが、次々と「変化」をくり返して来ただけなのです。
 今の私が生まれる前の「私の生命」、つまり「私の前世」は、地球で最初の生命体
に始まり、バクテリアだったり、プランクトンだったり、軟体動物、魚類、両生類、爬虫
類、哺乳類、そして人類の祖先だったりした訳です。
 それが、現代風に解釈しなおした「輪廻」であり「前世」なのです。

 ところで、私の意識の中には、「前世の記憶」などまったく存在しません。それ
は当然のことです。だから、「前世など存在するわけがない!」と、考えたいのが正
直な気持ちです。
 しかし実は、私は「前世の記憶」を持っているのです!
 これは別に、カルト宗教的な話ではありません。私の前世は、遺伝子(DNA)が
ちゃんと記憶しているのです。

 生物学の分野では、「個体発生は系統発生をくり返す!」と、いうことが知られて
います。
 つまり、受精卵から人間になるまでの胎児の成長(個体発生)は、地球で最初の
生命体から人類までの進化(系統発生)をくり返すというのです。
 初期の人間の胎児には、エラのようなものが現れたり、魚のような尾ができたり、
手足にミズカキの見える時期があります。それは、「人間の前世」が魚類や両生類
だったことを、遺伝子が記憶しているからです。
 母親の子宮の中で、胎児は「前世の記憶」を追いかけながら成長するのです。

 このように「輪廻」や「前世」をとらえ直せば、それらは現代でも立派に通用する
ものに、まさしく「生まれ変わる」と私は思います。



                 目次にもどる