IPCC第6次報告書
2021年8月15日 寺岡克哉
8月9日。
IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)は、
地球温暖化の科学的根拠をまとめた報告書の最新版(第6次
評価報告書)を公表しました。
IPCCが報告書を公表するのは、2013年に第5次報告書を
出して以来、8年ぶりとなります。
* * * * *
さて、このたびの報告書で、いちばん私が注目したのは、
地球温暖化の原因が、人類の排出した二酸化炭素などの温室
効果ガスであることについて、
「疑う余地がない」と、断定したことです。
ちなみに、
IPCCの報告書が、このたびの「断定」にまで至った経緯を、
20年前の第3次報告書から追ってみると、以下のようになり
ます。
----------------------------
第3次報告書(2001年)
新たな証拠に照らし、また依然として残る不確実性を考慮すると、
過去50年間に観測された温暖化の大部分は、温室効果ガス濃度
の増加に起因している可能性が高い(66%を超える確率)。
第4次報告書(2007年)
20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんど
は、人為起源の温室効果ガスの観測された増加によってもたらさ
れた可能性が非常に高い(90%を超える確率)。
第5次報告書(2013年)
20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な原因は、(化石燃料
の使用など)人類の活動である可能性が極めて高い(95%を超え
る確率)。
第6次報告書(2021年)
人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには
疑う余地がない(断定:100%の確率)。
----------------------------
じつは私は、このたびの第6次報告書で、
「ほぼ確実(99%を超える確率)」という評価になると思っていま
した。
ところが、
「疑う余地がない(断定:100%の確率)」と、それよりも踏み込ん
だ評価になったことに、すこし驚いて注目したわけです。
しかし、とにかく、
世界中の科学者たちが、慎重にも慎重な研究を重ね、これほど
の時間をかけて、
「断定」という結論に至ったわけです。
なので、この結論は、
もはや誰にも(たとえ元アメリカ大統領であっても)、
(思考力が正常なら)絶対に否定できないと言って良いでしょう。
* * * * *
ところで、
2015年に採択された国際的な枠組みの「パリ協定」では、
世界の平均気温の上昇を、産業革命前の19世紀後半に比べ
て、
1.5℃に抑えるよう努力することなどが、目標に掲(かか)げ
られています。
そして一方、このたびの第6次報告書では、
去年までの10年間における世界の平均気温が、
産業革命前に比べて、すでに1.09℃上昇したとしています。
さらには、
現在のまま、二酸化炭素を排出しつづけると(年間30~40
ギガトン)、
あと10年ほどで、気温上昇が1.5℃に達するとしているの
です。
* * * * *
世界の平均気温が、1.5℃上昇すると・・・
たとえば50年に一度という「高い気温」が観測される頻度
が、産業革命前に比べて、
1.09℃上昇した現在では、4.8倍になっていますが、
1.5℃上昇した場合は、8.6倍になるとしています。
また、
10年に一度という「大雨」の頻度が、産業革命前に比べて、
1.09℃上昇した現在では、1.3倍になっていますが、
1.5℃上昇した場合は、1.5倍になるとしています。
* * * * *
今年は、とても暑いですね。
そして、ちょっとした前線や、台風が来ると、
土砂崩れや、浸水などの被害が出ないかと、ヒヤヒヤして
しまいます。
いま現在(8月14日現在)も、
九州から中国地方にかけて記録的な大雨が降(ふ)り、
あちらこちらで、土砂崩れや、河川の氾濫(はんらん)、浸水
などの被害が発生しています。
1.09℃の気温上昇でさえ、もう、こんなことになっている
のです!
残念ですが、これから将来、もっと酷(ひど)い状況になって
行くのは確実でしょう。
しかも、温暖化対策を進めなければ、さらにもっと酷いことに
なってしまいます。
なので、「いまさら温暖化対策をしてもムダだ」と言うことには、
絶対になりません。
たとえ、どんな状況になっても、温暖化対策は絶対に必要で
あり、
それを一生懸命に進めて行くしか、ほかに方法がないのです。
目次へ トップページへ