池袋暴走事故 遺族の質問
                              2021年6月27日 寺岡克哉


 東京地方裁判所で6月21日。

 池袋乗用車暴走事故(注1)で、妻と娘を失った松永拓也さ
ん(34歳)が、

 「被害者参加制度」を利用して裁判に参加し、被告人質問を
行いました。


-----------------------------
注1 池袋乗用車暴走事故:

 起訴状などによると、飯塚幸三被告は2019年4月19日正午すぎ、
東京都豊島区東池袋4の都道で、ブレーキと間違えてアクセルを
踏み続けて時速約96キロまで加速し、赤信号を無視して交差点に
進入しました。

 横断歩道を自転車で渡っていた近くの松永真菜さん(当時31歳)
と、長女の莉子ちゃん(当時3歳)をはねて死亡させたほか、通行人
ら男女9人に重軽傷を負わせたとしています。

 自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われている、
旧通産省工業技術院の元院長である飯塚幸三被告(90歳)は、
過失は無かったとして無罪を主張しています。
-----------------------------



 この被告人質問で、松永拓也さんは、

 「事故当時、あなたは100%ブレーキを踏んだ自信があるのか」

 などと、飯塚被告の認識をただしました。



 これに対して飯塚被告は、

 「心苦しいとは思うが、私の記憶では踏み間違いはなかった」

 「私の過失はないものと考えています」

 などと、答えています。


            * * * * *


 裁判のあと、記者会見をした松永さんは、


 「加害者を心から軽蔑します」

 「今日に至るまで無罪主張は変わらず、信じられないです」

 「証拠と向き合って自身の過失を認めてくれたら、私たちの心情
は、もっと違うものになっていた」

 「残念だし、怒りを覚えざるをえない」


 と述べて、客観的な事実を見せられても、自分の考えを曲げよう
としない飯塚被告を、つよく批判しました。



 そして、

 「被告人の口から真実を述べてほしいという夢は破れた」

 「あとは裁判所に委ねたい」

 と述べ、落胆をあらわにしています。



 その上で、

 「私たちの心を踏みにじり続ける。私はもう彼に刑務所に入って
ほしい」

 と、強い言葉で語りました。


            * * * * *


 一方、

 事故当時に、飯塚被告が運転していた車のメーカーである
トヨタ自動車は、

 同6月21日にコメントを発表しました。



 そのコメントの中で、トヨタ自動車は、

 「今回の事故でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたしま
すとともに、けがをされた方の1日も早い回復をお祈り申し上げます」

 「被告が裁判の中で、車両に技術的な欠陥があると主張していま
すが、当局の要請に基づく調査協力の結果、車両に異常や技術的
な問題は認められませんでした」

 と、しています。


            * * * * *


 以上、ここまで見てきて私は思うのですが・・・ 



 おそらく飯塚被告は、

 裁判で有罪の判決が出たとしても、心の中では自分の過失を絶対
に認めないでしょう。

 このような人間に、自分の過失を心から認めさせるのは、まったく
不可能のように思えます。



 そして、そもそも私は、

 あまりにも高齢な者に、自動車の運転を認めていることそのものが、

 原則的に間違っているのだと考えています。



 なので、

 ある年齢(70歳ぐらい)に達したら、運転免許の資格を自動的に
失うようにするとか、

 時速30キロ以上の速度が出ない車しか、運転することが出来ない
ようにするとか、

 そのように、

 「社会的な制度」を変えていくしか、ほかに方法が無いように思えて
なりません。



      目次へ        トップページへ