次の目標
                              2021年5月16日 寺岡克哉


 これまで私は、

 まず「1000本のエッセイを書くこと」を、目標にしてきました。


 そして前回で、その目標がいちおう達成されたわけですが、

 ここにきて、「次の目標」をどうするのか、ちょっと悩んでいます。



 というのは、

 このまま単純な流れで行けば、「次は2000回目まで書き続け
る」という目標が考えられるのですが、

 そうすると、そのとき私は77歳になっているでしょう。

 しかし、

 私がその年齢まで生きられるのか、ちょっと自信がないのです。



 ちなみに、

 第1回目のエッセイを書いた19年前、つまり私が38歳だった
ときには、

 1000回目を書いた時になっているであろう、57歳まで生き続け
ることに対して、

 何の疑問も感じず、「それが当たり前だ」という確信に近いものを
持っていました。



 ところが、あと2ヵ月ほどで58歳になろうという現在では、

 これから先の19年間、つまり77歳まで生き続けることに対して、

 ちょっと自信がないというか、まったく確信を持つことができない
のです。



 その理由としては、

 自分の体力が、日に日に衰(おとろ)えていくのを如実(にょじつ)
に実感していること。

 そして、

 心臓発作を抑える薬を飲み続けなければ、(つまり、何らかの理由
で薬が手に入らなくなれば)生命が維持できない体になってしまっ
たこと。

 さらには、

 両親の介護を通して、毎日一緒に暮らしていた者の死を、2回も
目(ま)の当たりにしたこと。

 などが、大きく影響しているのだと思います。



 つまり、「自分の死」というものが、

 38歳のときとは比べものにならないほど、グッと現実味を帯(お)
びて来たというか、身近に感じるようになって来たというか、

 いつ起こっても不思議ではない、ごく自然な現象として感じるよう
になって来たわけです。



 まさに、これが、

 38歳のときの自分と、もうすぐ58歳になる今の自分との、いちば
ん大きな差なのだと思います。


              * * * * *


 とにかく、以上のような理由で、

 この先、2000回目までエッセイを書き続けるというのは、

 ちょっとムリがあるかも知れないと感じています。



 そのような状況の中で、

 じつは瀬戸内寂聴さん(注1)が、以前に何かの本で書いて
いたのを覚えてるのですが、

 たしか「60歳代が、いちばん良いものを書ける」のだそうです。


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注1 瀬戸内 寂聴(せとうち じゃくちょう)さん:

 日本の小説家で、天台宗の尼僧です。俗名(ぞくみょう)は
瀬戸内晴美さんといい、現在は京都府に在住しています。
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 つまり、

 50歳代では、まだ物を書くには勉強不足や経験不足ですが、

 しかし70歳代になると、体力や気力が落ちて、書くことに対する
集中力が落ちてきます。

 そのため「60歳代が、いちばん良いものが書ける」というのです。



 そんなことを、

 瀬戸内寂聴さんが何かの本で書いていたように、私は記憶して
いました。



 そこで私は、

 60歳代が、いちばん良いものを書けるというのなら、

 「とにかく70歳まで書き続ける」というのを、次の目標にしようと
決めたのです。



 この目標なら、

 それなりに努力すれば、そして突然の病気や怪我、事故、災害
などに遭(あ)うことなく、幸運が味方をすれば、

 なんとか達成できるのではないかと、そのように感じている次第
です。



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